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くーぷら
感傷に浸るための物書き擬きが綴り置いたもの
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久しぶりに詩的な文です。


夏休みという甘い誘惑に浸って慣れてしまった身体にはきつい秋学期のスタート。教職の関係で遅く帰ることになってしまうここ4ヶ月から逃げたいが為に現実に背を向けて散歩していました。愛すべき我が町の、市街地と住宅地をくぐり抜けるように歩いていました。
秋風が凍みる季節になってしまいましたね、と言いたくなるような夕暮れでした。雲の散り具合は紛うことない時を刻ませている、ような。
ふと心が欲しているような気がして大きな道路から外れた、自宅とは間逆のほうにある田舎地に立ち寄りました。そこからは開けた川原の公園と、田圃と、住宅と、山が見えます。なんとなく、懐かしいような。確かに心が求めていたのだと感じました。
そして、また道を戻って出身の中学校へ。あまりいい思い出は無いのですが、汗水垂らして走り回った記憶だけにだけは嘘を吐けないようで、やはり安心しました。自分たちが礎を築いたようなものである園芸部の花壇は美しさを誇っていました。
そのまま、ついこの間まで通っていた隣の高校へ。工事中の足場や小屋、ベールに包まれた新校舎が寒空に晒されています。何となく廃墟、という言葉が浮かんで、いやこれは違うと首を振りました。夕焼け空とその校舎を携帯に収めました。

そのとき。道の反対側から走ってくる人影が見えました。気にも留めていなかったのですが、距離が詰まってくるにつれて見たことのあるような感覚がしました。あああ、と思ったときには強い早鐘を打ち鳴らす心臓。好きだった子の輪郭に重なりました。結局、当然のことながら、そんなのは勝手のいい幻想であります。幾分か小さい女の子でした。なんとなく胸を撫で下ろすような思いですれ違い、一人小さく嘲笑しました。
今まで書けなかったワード。好き「だった」という言葉は絶対使いたくないと思って、ついこの初夏までそう固く信じていました。でも、はたと今まで必死になってつなぎとめようとしていたのが、過去の群像ではないのかと気付きました。同級生から言われた「恋に恋していてはならない」という言葉を否定してはいましたが、自分の場合その過去に縛られ、目を背けようとしていなかっただけなのではないかと思いました。胸の凝りがすとん、とほぐれるように感じました。
そして、振り返れば意地になっていた自分が見えます。今まで確かにあった恋心はどこに飛んでいってしまったのだろうか、と問いかけます。この恋は終わってしまったのだとようやくピリオドを打てました。しかし今日、思い出を掘り起こしてしまい、心臓が跳ねたのはやはり、どこかにまだ、種火は消えないままであるのかと悟ります。

まだ新しい恋をしたいとは心の底から願いはしませんが、過去を捨て去りたいとも思いません。また感傷的になる時間が増えるな、と一人身を凍えさせながら家に帰りました。
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